今回は、不動産投資に挑戦したものの知識が足りず、ローン返済が厳しくなり、苦しい経験をした佐伯美和さん(仮名・現在38歳・当時33歳)にお話を伺いました。
不動産投資は資産形成の手段として魅力的ですが、準備不足のまま始めるとリスクが大きくなります。

佐伯さんがどのように投資を始め、どこで失敗し、何を学んだのか詳しくお伝えします。
不動産投資を始めたきっかけ
――佐伯さん、不動産投資に興味を持ったきっかけを教えて下さい。
「もともと投資には興味がありました。でも、株やFXは知識が必要で難しそうだったので、手を出せなかったんです。そんなとき、大学時代の友人が『不動産投資ならローンを組んで家賃収入で返済できるから、実質タダで資産が手に入る』と言っていたのを聞いて、興味を持ちました。友人はすでに数件の物件を持っていて、順調に収益を出しているようだったので、そんなに簡単なら私もやってみようかなと思いました」
――なるほど、友人の勧めが大きかったんですね。すぐに物件を探し始めたんですか?
「はい、すぐに探しました。でも、不動産の知識がなかったので、自分で調べるよりも友人の紹介で業者を頼る形になりました。その業者も『家賃収入でローンを賄えるからリスクは低い』と言っていたので、すっかり安心してしまいました」
購入した物件とその当時の状況
――購入したのはどんな物件だったんですか?
「東京近郊の築15年のワンルームマンションです。駅から徒歩15分くらいの場所で、業者からは『賃貸需要が高いエリアだから安心』と言われました。価格は2800万円で、頭金を200万円入れ、残りは銀行からローンを借りました。月々の返済額は約10万円で、家賃収入は12万円の予定だったので、最初は順調だと思っていました」
――購入時のシミュレーションはしっかりとされましたか?
「ほぼ業者任せでした。空室リスクや修繕費など、細かい計算はしていなくて、とにかく『家賃収入がローンを上回るなら大丈夫』という気持ちで進めてしまいました」
資金計画の甘さと問題の兆候
――問題が発覚したのはいつ頃でしたか?
「最初の半年間は特に問題はなかったです。でも、その後の更新時に入居者が退去してしまいました。すぐに次の入居者が決まると思っていたのに、1か月経っても決まらず、結局3か月間空室の状態が続きました。家賃収入がないのにローンの返済は毎月あるので、貯金を取り崩すしかなくなりました」
――空室のリスクは想定していなかったんですか?
「全く考えていませんでした。業者の話を鵜呑みにしてしまって、『立地が良いからすぐに次の入居者が見つかる』と楽観視していたんです。でも、実際には周辺にもっと便利な物件が増えていて、競争が激しくなっていたんですよね」
空室と予想外の出費
――空室が続く中で、他に想定外の出費はありましたか?
「管理会社から『エアコンが古くなっていて交換が必要』と言われたのが最初の大きな出費でした。工事費も含めて20万円以上かかりました。他にも共用部の修繕費負担が発生したりして、思っていたより維持費がかかることを痛感しました」
――家賃収入がない中での出費はきついですね。
「はい、どんどん貯金が減っていくのが怖かったです。収入があれば補填できるんですが、空室期間が長引くとどんどんマイナスが膨らみます」
返済の遅れと精神的負担
――ローンの返済はどうされていましたか?
「最初は貯金を崩していましたが、それも底をついてしまいました。そうなるとクレジットカードのキャッシングを使うしかなくなり、気づいたら借金が増えていきました」
――精神的にもかなりきつかったのでは?
「本当に辛かったです。友人にも相談しましたが、『そのうち入居者が見つかるよ』と言われるだけで、具体的な解決策はもらえませんでした。家族には投資をしていることを言っていなかったので、相談することもできず、一人で抱え込んでいました」
物件を売却する決断
――最終的に、どのような判断をされたんですか?
「もう耐えられなくなって、物件を売却することにしました。でも、購入時よりも市場価値が下がっていて、200万円以上の赤字になりました。それでもローンが残るよりはマシだったので、手放しました」
――売却したとき、どんな気持ちでしたか?
「正直、悔しかったです。『不動産投資は簡単』と思っていた自分が甘かったと痛感しました。勉強不足のまま始めるべきじゃなかったと後悔しました」
失敗から得た教訓
――今回の経験から、何を学ばれましたか?
「やっぱり、投資はしっかりとした知識と準備がないと厳しいですね。特に不動産は金額が大きいので、一つの判断ミスが大きな損失につながります。リスクをしっかり考えたうえで、慎重に進めるべきだったと思います」
初心者が不動産投資で気をつけるポイント
――最後に、これから不動産投資を考えている人にアドバイスをお願いします。
「まず、業者の話をそのまま信じないことですね。事前にしっかり勉強して、自分で判断できる知識を身につけてほしいです。それから、収益だけでなく、空室リスクや修繕費などの出費もきちんと計算することが大事です。焦って購入すると後悔するので、冷静に検討してほしいですね」
まとめ
佐伯美和さんの経験から、不動産投資の難しさがよくわかりました。
特に、知識不足のまま始めるとリスクが大きくなること、計画が甘いとすぐに資金繰りが厳しくなることがよく伝わってきました。

不動産投資を検討している方は、事前の準備と情報収集をしっかり行い、慎重に判断することが大切ですね。